『ジョジョ・ラビット』の感想~社会問題に大胆に切り込むナチス×コメディの傑作!

タイカ・ワイティティ監督の映画『ジョジョ・ラビット』を観てきたので、紹介します。第92回アカデミー賞に複数部門でノミネートされて、話題にもなっている作品ですね。

これまでにナチスドイツをテーマに扱う映画をいくつか観てきましたが、その中でもダントツでユーモラスなエンターテインメント作品でした。

ビートルズの”I Want To Hold Your Hand”で始まり、デヴィット・ボウイの”Heroes”で終わるナチス映画がこれまでにあったでしょうか?

タイカ・ワイティティ監督らしさ満点の斬新な切り口で、ナチスドイツというテーマをコメディタッチで描いた傑作です。

どんな映画なの?

作品の概要

・タイトル:『ジョジョ・ラビット』 (原題:Jojo Rabbit)
・製作:2019年(アメリカ)
・日本公開日:2020年1月17日

・監督:
タイカ・ワイティティ
ニュージーランド出身。監督業のほか、俳優や脚本を務めることもあり、本作でもアドルフ・ヒトラー役として出演もしています。
2017年公開のマーベル映画『マイティ・ソー バトルロイヤル』の監督を務めたことで、一段と脚光を浴びるようになりました。

・キャスト:
ジョジョ/ローマン・グリフィン・デイビス
ドイツに住む小柄で気弱な少年。ナチスドイツに憧れていて、ユダヤ人は凶悪な存在だと信じている。

アドルフ・ヒトラー/タイカ・ワイティティ
ジョジョの空想上の友だち。ジョジョにしか見えておらず、ジョジョの父親的な存在として接する。

ロージー/スカーレット・ヨハンソン
ジョジョの母親。いつも明るい気丈な女性。

エルサ/トーマシン・マッケンジー
ユダヤ人の少女。ジョジョの家の隠し扉の中で隠れて住んでいた。

ヨーキー/アーチー・イェーツ
ジョジョの唯一の実在の友だち。

クレッツェンドルフ大尉/サム・ロックウェル
前線を離れた片目のドイツ軍人。

あらすじ

第二次世界大戦下、ドイツに住む10歳の少年ジョジョが本作の主人公。
父親は軍人として戦地におり、姉は病気で死別したため、母親のロージーと2人で暮らしていました。

ナチスに憧れるジョジョには、空想上の友だちのアドルフがいて、ジョジョに反ユダヤ思想を語ってくれたり、困ったときには励ましてくれる大事な存在です。

ある日、ヒトラーユーゲントの合宿に参加したジョジョは、ウサギを殺す命令を実行することができませんでした。そして、臆病者の「ジョジョ・ラビット」とあだ名をつけられてしまいます。

逃げ出したジョジョの下にアドルフが現れ、ジョジョを勇気づけてくれます。自信を取り戻したジョジョは、張り切って手榴弾の訓練に戻りますが、失敗して爆発に巻き込まれてしまいました。

大ケガから回復したものの、まだ傷が残るジョジョは、完治するまではヒトラーユーゲントの事務所で奉仕活動行うことになりました。

ジョジョが仕事を終えて一人で留守番をしていると、2階から物音が聞こえてきました。調べてみると、なんと、姉の部屋に隠し扉があり、その中にユダヤ人の少女がいたのです。

エルサという名のその少女は、ロージーの招きによってそこに隠れていました。ドイツの敵であるユダヤ人が同じ家にいて、さらにロージーがその協力者だということを知り、ジョジョは大混乱です。

エルサは、「私のことを通報すると、ロージーも捕まってしまう」とジョジョを脅します。そこでジョジョは、ユダヤ人の秘密を全部話すことを条件に、 エルサをそのまま住まわせることにしたのでした。

エルサからユダヤ人について教わるジョジョ。二人で同じ時間を過ごす中で、ジョジョはだんだんとエルサの人柄に惹かれていきます。戦争が終わったら婚約者ネイサンに再会したいというエルサに、ジョジョはネイサンのふりをしてニセの手紙を書いて励ましたりしました。

そしてまた、ユダヤ人は下等な存在だと教わってきた内容と、実際のユダヤ人はまったく違っていることに気づいていくのでした。

そんな日々を過ごしていたある時、ジョジョが留守番をしていると、秘密警察が突然家に現れて、家宅捜索を始めます。エルサの存在がばれてしまったのかと焦るジョジョでしたが、意外にもエルサは堂々と警官の前に現れ、ジョジョの姉インゲのふりをしてたことで、その場を乗り切ることができました。

しかしその後、ジョジョが街の広場に行くと、何人かが絞首刑にされていました。そして吊るされた死体の中に、ロージーの姿を見つけます。ジョジョは、ただ涙を流すしかできませんでした…。

ジョジョとエルサの生活が苦しくなっていくのと同じように、ドイツの戦況も劣勢へと傾いていきます。そしてアメリカ軍が街に攻め入ってきました。

戦火に包まれ混乱する街の中でジョジョは、親友のヨーキーやヒトラーユーゲントの少年兵など見知った人たちまでもが戦っている様子を目の当たりにします。そしてドイツ軍は敗れ、ジョジョはクレッツェンドルフ大尉らと一緒につかまってしまいました。

大尉は、機転を利かせて、ジョジョのことをユダヤ人だと嘘をつき、逃がしてくれました。ジョジョは背後に響く銃声から逃げるように、エルサの待つ家へと帰ります。

戦争の結果を聞かれたジョジョは、エルサと離れたくないがために「ドイツ軍が勝った」と嘘をつきます。しかしジョジョは再びネイサンのふりをして、手紙を書いて読み上げると、実はネイサンはすでに亡くなっているのだとエルサに明かされました。

励ましてくれたことに感謝するエルサ。そしてジョジョはエルサに愛を告白しますが、「弟として、愛している」とだけ返事をもらいました。そこへアドルフがジョジョの前に現れますが、アドルフを思いっきり外へ蹴り飛ばしてしまいます。

ジョジョに連れられて家の外へ出たエルサは、自由が訪れた世界を目の当たりにします。そして二人は見つめ合って、踊りだすのでした。

みどころ

ジョジョの成長を通して発信されるテーマ

物語は、10歳の少年ジョジョの視点で進んでいきます。作品を通して、ジョジョが一人の人間として成長していく姿が描かれています。

ジョジョは最初、ヒトラーに憧れ、反ユダヤ主義を盲目的に信じる少年でした。彼の妄想上の友人が「アドルフ・ヒトラー」であること、またアドルフの言葉を受けて、ジョジョが行動するきっかけを得ることからも、明らかです。

そして物語が進むにつれて、ジョジョが信じていた世界が、どんどんと崩れていきます。
・大好きな母親が、ユダヤ人をかくまっていたこと
・下等な人種のはずのユダヤ人に、愛情を抱いたこと
・憧れていたドイツ軍に身をおいて戦う友だちを、目の当たりにしたこと

そんな出来事を通して、ジョジョは自分が信じていた世界が狂った世界であることを思い知らされます。しかし、ジョジョは逃げることなく、現実の世界を受け入れて、新しい道へと進んでいきます。

自分が思う常識が当たり前だと思い込んで思考停止するのではなく、外の世界へ踏み出して、視野を変えてみることの重要性。現代にも通じる普遍的なテーマを描いている作品でした。

「戦争」を明るいコメディへと変えるワイティティ監督の斬新さ

戦争、ナチスドイツ、反ユダヤ思想といった重いテーマを扱った作品でしたが、全体の雰囲気はその逆で、コメディ色が強いポップな雰囲気で描かれています。重いテーマを、笑いを使って描ききった斬新さは、さすがワイティティ監督だと言えるでしょう。

特に印象的だったのは、「ハイル・ヒトラー!」と言いながら直立して片手を伸ばす、いわゆる「ナチス式敬礼」の描き方です。この敬礼はドイツではタブーとされています。私は昔ドイツの学校に通っていたのですが、学生たちは挙手するときに腕を伸ばさずに人差し指をあげるという習慣がありました。

映画の中でもこの敬礼が出てきます。しかし、登場人物がすごく面倒くさそうに敬礼をしていたり、挙句の果てには何度も連発してギャグのようになっています。実際、映画館の中でも笑いが起こっていました。

これまでは負の歴史として暗く描かれていたナチスドイツを、ワイティティ監督は完全にコメディにしてしまったのです。

観客がより親しみやすいコメディという形で、ナチスドイツや人種差別の批判を表現した切り口は、今までに見たことがない新しい体験でした。

まとめ

『ジョジョ・ラビット』は、

ジョジョ少年の成長を楽しむヒューマンドラマとして、
ナチスドイツや反ユダヤ思想を扱った歴史映画として、
ワイティティ監督の描く最高のコメディ作品として、

さまざまな視点から楽しむことができる傑作でした。

ドイツの歴史を知らない人でも楽しめる内容になっていますので、ぜひ劇場へ足を運んでみてください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です