森美術館:「未来と芸術展」の見どころと感想

森美術館で開催されている「未来と芸術展:AI、ロボット、都市、生命――人は明日どう生きるのか」にいってきました。

この展覧会では、世界の最先端の技術によって、未来の私たちの生活がどうなっていくのかを芸術作品を通して知ることができます。

でも最後には、技術はどんどん進歩するけれども、私たちは本当に豊かになっていくだっけ…?と考えさせられてしまうような、そんな不思議な内容となっていました。

アート好きな方はもちろん、建築やバイオテクノロジーに興味がある方にもお勧めしたい展覧会です。

「未来と芸術展」の見どころ

まるで万博!?見たこともない最先端の技術が集結

「未来と芸術展」というタイトルが表している通りに、もうすぐ実現するかもしれない「未来」の可能性を垣間見ることができます。

海上に浮かぶ都市計画や人工知能が導き出したデザインによるオブジェ作品、培養肉レストランのイメージなど、最先端のテクノロジーを使った作品が展示されています。

これまでに知らなかったような技術もたくさんあり、まるで万博に来ているかのような感覚で楽しむことができました。

都市デザインから宇宙、AI、ロボット、生命科学、映画まで幅広いジャンルを網羅

最新の技術が集まる本展ですが、その幅広さも見どころの一つです。

都市デザインに関する展示から始まり、3Dプリンターや火星開発、自動運転があり、ロボットと触れ合えるスペースを過ぎたと思ったら、食虫アートやバイオテクノロジーによる赤ちゃんの遺伝子操作…といった具合。

もはや何が何だかって感じですね笑

でも、これだけたくさんのジャンルを横断的に見られるチャンスはなかなかありませんよ!

南條 前館長が手掛ける最後の企画

本展がここまでボリューミーな内容となった理由の一つとして、森美術館の前館長の南條史生氏の活躍があるといえるでしょう。

南條氏は、約13年もの長きにわたって森美術館の館長を務めてきた方で、2019年12月末に館長を退任されました。

つまり、この「未来と芸術展」は南條氏が館長として企画した最後の集大成なのです。

「未来と芸術展」レポート

1.都市の新たな可能性

展覧会のスタートは、最先端の都市デザインに関するセクションです。

海上に浮かぶ都市や砂漠に囲まれたスマートシティなど、人間の住む都市を、環境の変化へどう対応させていくのかという構想を見ることができます。

海に浮かぶ都市イメージ。

世界中で海面上昇が騒がれている昨今、居住スペースが水上へと広がっていく日も近いのかもしれません。

《2050 パリ・スマートシティ》という作品。

2050年までに温室効果ガスを75%減らすという目標に向けて、パリの街をクリーンエネルギー発電や植物を利用した空調を備えた街へとデザインする提案です。

2.ネオ・メタボリズム建築へ

メタボリズムとは、1960年頃から始まった建築に関する運動・思想のことです。
都市や建築は不変のものではなく、環境の変化に合わせて変化していくものとして定義しました。

そのメタボリズム思想を引き継ぎ、ドローンや3Dプリンター、バイオテクノロジーなどの最先端の技術を駆使したものが、ネオ・メタボリズムです。

前セクションに引き続いて、SF映画やゲームの中でしか想像できなかったような建築・デザインを見ることができました。

《ムカルナスの変異》という作品を内側から。

「ムカルナス」というイスラーム装飾で用いられる幾何学模様をAIに学習させ、機械が計算した新たなデザインです。

人間では到底作り出せないようなデザインだそうで、率直に「きれいだなぁ」という感想を持ちました。

でもその一方で、人間の感じる「美」をコンピューターが学び、上回ってしまったという事実に恐怖さえも感じます。

3.ライフスタイルとデザインの革新

次のセクションでは、服飾や食文化など、私たちの衣食住に関する技術・デザインが紹介されています。

神経組織をモチーフにしたドレスや3Dプリンタでフィギュアのように造形されたお寿司など、より身近に感じられる作品が並んでいました。

その中でも特に印象的だったのが、長谷川愛《ポップ・ローチ》です。
私の好きなアーティストさんの一人でもあります。

世界的な人口の増加によって訪れる食糧不足。その解決がこの食用ゴキブリのアイデアです。

過酷な環境でも生き延びるゴキブリの生命力に着目し、ゴキブリを遺伝子組み換えすることで、美しく、機能的な食糧として利用しようというものでした。

エナジー・バナナ味のゴキブリを食べる未来が、もうじきやってくるのでしょうか…。

4.身体の拡張と倫理

4番目のセクションでは、ロボットとバイオテクノロジーの2つをキーとした作品がそろえられています。

私たちの 「身体」や「生命」、そもそも「人間」って何なんだろう?
技術が進歩したとはいえ、こんなことまでしちゃっていいの?

といったような、私たちの倫理観へ問題を投げかけてくる作品が多くありました。

自分で耳を切り落としたというエピソードで有名な画家のフィンセント・ファン・ゴッホ。その耳を再現した作品がこの《シュガーベイブ》です。

ただの模型ではなく、なんと、ゴッホの子孫のDNAを採取し、軟骨細胞を培養して作り出したバイオアートなのです。

アギ・ヘインズによる「変容」シリーズから。

親が生まれてくる子どもをデザインして、体温調整に特化した皮膚へ形成するというアイデア。

体外受精や代理母出産など、出産のパターンは増えましたが、一体どこまでの技術が許されるのでしょうか。

5.変容する社会と人間

最後のセクションでは、テクノロジーの発展によって生まれた新たな価値観や社会性を描き出し、改めて私たちに「豊かさ」「幸福さ」「人間らしさ」「生命」について問いかけてきます。

一人で死んでいく人間を看取るロボットや遺伝子操作によって3人以上の親を持つ子ども、監視カメラに支配された部屋など、もうすぐ来るかもしれない未来の可能性を提示してくれる作品ばかりでした。

《データモノリス》という高さ5mほどもある大きな作品。

この大きな直方体に、紀元前9,600~7,000年頃のトルコで建てられたとされるギョベクリ・テペ遺跡に刻まれた図像や情報をAIが解析した映像が映し出される作品です。

一万年近く前のイメージと最先端の技術であるAIの融合による作品で本展が締めくくられます。

「未来と芸術展」の感想

そう遠くない未来にやってくるかもしれない世界の可能性を見せてくれる展覧会で、好奇心を刺激される内容でした。

ただその一方で、テクノロジーの進歩が速すぎて、私たち自身や社会の仕組みがそれに追いつけていないのかもしれないと考えさせられる部分も多くありました。

この作品はこう感じた、この技術は素晴らしいけれどこんなところが物足りないね、といったような人それぞれ色んな感想が出てくるはずです。

他の人がどんな感じ方をしたのかを、話しながら回ってみるとより楽しめるのではないかと思います。

3月末まで開催されていますので、ぜひ未来の芸術の姿を体感してみてください!

展覧会情報

会場:森美術館 (六本木ヒルズ森タワー内)
開催期間: 2019/11/19(火) ~ 2020/3/29(日)
開館時間: 10:00~22:00(最終入館 21:30)
料金:
 一般 1,800円
 学生(高校・大学生) 1,200円
 子供(4歳~中学生) 600円
 シニア(65歳以上) 1,500円
公式HP: https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/future_art/

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